病院などの医療施設で患者さんの死を迎えた時には、看護師が対応を求められる場面があります。
看護に手を尽くしたとしても、患者さんを失った家族の気持ちは複雑な場合が多いと言えるでしょう。
特に患者さんが安定した状態だったのに、容態が急変して予想より早く亡くなってしまった場合には、家族が納得できず医療従事者と患者家族の間に感情の対立が残ることもあります。
関係がこじれてしまうと、医療過誤訴訟に発展することもあるでしょう。

こうした場面でも患者家族との人間関係を損なわないために、看護師は日頃から患者家族との良好な関係作りに努め、患者さんの死に向けて心の準備をしておかなければなりません。
患者さんが死に至った際には、主治医と担当看護師が経過説明を行う義務を負います。
時には家族から医療の至らない点を責められ、いたたまれない気持ちになることもあるでしょう。
そこで、自責の念に駆られて説明の場から看護師が退席してしまうことも珍しくありません。

すると、患者家族はますます不信感を強めるので、看護師の立場はさらに悪くなってしまうでしょう。
説明を行う際に、患者家族と患者さんを失った悲しみを共に分かち合い、死後には全身清拭を一緒に行って、ご遺体を院外まで搬送するための見送りに立ち会うことも重要です。
全身清拭は患者さんの身体に施す看護師の最後の業務です。
そして、主治医と担当看護師が患者家族とご遺体を見送ることは、多くの病院で慣習となっています。
最後まで心をこめた看護を行う姿勢の現れとして、院内で死亡した患者さんと家族に対するケアは看護師に不可欠と言えるでしょう。